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2008年8月14日 (木)

法科大学院の本来あるべき姿

<法科大学院の統廃合>

 保岡法相が「教育能力のない法科大学院は学生に配慮した上で合併かやめるかし、あるべき姿を目指して整理すべきだ」と発言したが、これは「合格実績のない法科大学院は統廃合すべきだ」という意味なのだろうか。

 もしこのような意味なら、学校も学生もいっそう新司法試験対策をしなければならなくなる。

 短期合格するなら法科大学院に在学中の段階から新司法試験対策の傾向にならざるを得ない危惧を感じているが、それではダメだというのが、法務省や文部科学省などの考え方だと思われる。

 そのような考え方なら、法科大学院に教育能力があるかないかは、新司法試験の合格実績を重視すべきではなく、新司法試験合格後の弁護士活動での実績(地域偏在解消や社会活動をする弁護士を多く輩出しているかも含めて)、あるいは新司法修習での二回試験を基準に判断すべきではないだろうか。

 もっとも、そもそも教育能力の有無を客観・明確に判断することができるのか疑問であり、設置基準を満たした法科大学院にその設置を認めた現状においては、統廃合をするかしないかについては各法科大学院の判断に委ねるべきであろう。

<新司法試験と法科大学院との関係>

 私の見解は、文部科学省などの考え方とは多少異なる。

 学生が法科大学院において新司法試験以外の科目を軽視することは好ましくないと思うが、法科大学院が新司法試験対策指導をすることに問題はないと考えている。

 実務家になる能力として表現力も必要であることを考えれば法科大学院が新司法試験の論文の書き方を指導することに何ら問題ないはずであるし、論文指導の中で学生の理解の程度を知ることができ、その後に授業をする際の資料となり、論文指導は授業の質を高めることにもつながるからである。

 法科大学院と新司法試験は連携して法曹の質を保つ役割を果たすことが期待されており、法科大学院の指導をきちんと受けていればそれが新司法試験対策になって新司法試験に合格できる、これが本来のあるべき姿であろう。

<乱立の法科大学院「低実績校は整理」 法相 (産経ニュース関連記事)>
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080813/edc0808130811004-n1.htm

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コメント

はじめまして、普段から拝見している者ですが、まさに自分にも関係してくることですの、一言コメントをさせていただきたいと思います。

国の方針はいずれにしても形式的にしか物事を見ていないような気がします。設置認可にしかり、上記エントリーの内容にしかり。

確かに、本来国の裁定する基準としては形式的かつ客観的に行うことが望ましいとは思います。しかし、特に法曹の質の低下が叫ばれ、各所で合格者削減の主張がなされている昨今、なおさら教育内容の実質面を重視すべきものと思います。

その点に関しては、田村先生のご意見に賛同します。

さらに、私見としては主に首都圏や関西圏にあるマンモス校の定数を削減し、より有能な先生方も各学校に配置できるような体制を整えるべきだと思います。その結果、各校毎に特色のある法曹を輩出していくことが可能となり、長期的視野から見れば法曹の質を高め、より国民に対して高度な司法サービスを提供できるものと考えます。

また、現状の合格者数を維持する限り、新司法試験の合格率も上がり、より試験に捕らわれない本来国が目指している法科大学院のあり方を実現することも可能になると思います。

現在の各学校の情勢からすると、優秀な先生方(が、決して教育面でも優れているとは限らないのですが・・・)を財務体力のある学校が囲い込み、結局優秀な学生もネームバリューにひかれてそのような学校に集まり、一般に下位校と呼ばれる学校がじり貧の状態になってしまう。なにか負のスパイラルがずっと続いている感じがします。

今回の保岡法務大臣の指摘は、法務省と文科省が一体となって法曹の要請に取り組む姿勢を見せている点で一定の評価はできます。ただし、その対応策をもう少し柔軟に考えてもらえればと思い、書き込みをさせていただきました。

また、本エントリーとは直接関係はないのですが、受験生の立場という点を差し引いても、法曹の質を高めるのであれば、弁護士であっても競争社会に身をさらし、互いに切磋琢磨した上で、共存していく社会を形成するのが望ましいと思います。

法律は、主権の及ぶ範囲でしか効力が生じない点で、囲い込みのようなグループを形成しがちです。しかし、国家としての秩序を維持しつつ、国民へのサービスを提供する点では、他の第三次産業と変わらないと思います。

また、互いに競争しその中で各自が自己努力をすることによって、新たな法解釈を生み出し、より豊かな社会を形成していく役割を在野の法曹である弁護士も担っていると思いますし、本来国民に一番近い立場であるものとして、当然に念頭に置いた上で活動すべきだと思います。

はじめてのコメントでありながら、長文失礼いたします。

投稿: とある法科大学院生 | 2008年8月14日 (木) 11時30分

ロースクールが多いのは自明で
そのことがロー設置当初の理念をおかしくしている(合格率の問題等)。
下位ロー淘汰は当然で、法務省も最初から
それを見込んでいたと思う。
例えば、定員数からしても東北地方には
ローは一校で十分である。

投稿: とあるロー生 | 2008年8月15日 (金) 01時05分

>とある法科大学院生さん

おっしゃるとおり法務省と文部科学省が法曹養成過程を何とかしようとしているその姿勢は評価できます。

法曹がサービス業であること、そして他のサービス業よりも国民に一番近い位置に立つべきであるという考え方に賛成です。

投稿: | 2008年8月15日 (金) 09時02分

>とあるロー生さん

<法科大学院(定員数)が多い理由>
下位ローが何を指すのかわかりませんが、おっしゃるとおり法科大学院が自然淘汰されるのを見込んでいたのだと思います。その基礎には、設置基準を満たした学校には設置を認めるのが公平であるという考えがあったのかもしれません。
設置を認める大学と認めない大学とを設立当初から判別することは困難とも言えるでしょう。

また、法科大学院修了者は、法曹以外にも活躍の場はあると考えていたのでしょう。
ただ、単なる修了者が法曹以外の場で活躍すると考えていたのか、新司法試験合格者が法曹以外の場で活躍すると考えていたのかはわかりません。

さらに、法科大学院に入学しても卒業できない人が多数いると考えていたのだと思います。
私は、法曹の質を保つためには、結果的に卒業できない者が多数いるということはやむを得ないと考えています。
もっとも、法曹の質を保つために必要な授業や指導がなされていることが前提です。

<各校の定員数の配分>
法科大学院の設置における各校の定員数についても、学生に対する教員の割合など、設置基準を満たしていれば各校が設定した定員を認めると判断したのかもしれません。
また、弁護士の都市偏在の問題を考慮したのかもしれません。

話はずれますが、私は、定数が少ない法科大学院、弁護士過疎問題対策を重視している法科大学院を選んで数校受験しました。

<最後に>
私は、設置基準を満たし教育の質が保たれる学校と判断したならば設置を認めることが公平・適切であると考えています。
また、新司法試験の合格率が低いこと自体については、問題であると感じてはいません。
ただ、法曹の数を増大するペースをダウンさせるべきだという意見については、疑問を感じます。
なぜなら、国民の利便性のために法曹の数を増大させることが司法制度改革の目的であったはずであり、ペースダウンをせずに法曹の質を保つことを最優先に考えるべきだからです。

投稿: | 2008年8月15日 (金) 10時07分

田村先生、レスポンスありがとうございます。

とあるロー生さんへのレスポンスに関連してお聞きしたいのですが、関西の某弁護士会や関東のいくつかの弁護士会が合格者のペースダウンの決議をしているようですが、司法制度改革の議論の中で、各弁護士会はどのようなスタンスを取っていたのかご存じでしょうか?

大学院の内部では、どこどこの弁護士会は割と反対だとか賛成だといった意見をちらほら聞きますが、弁護士会としての正式な決議をしたという話までは聞いたことがありません。

むしろ法科大学院という法曹要請の実績がない教育機関から輩出される法曹の質は不明確だから、新司法試験の合格者数も慎重に検討していくべきだ、といった内容の決議を、制度開始前に行っておくべきだったのではないかと考えます。

そうであれば、改めての決議ということで確認的な内容であると納得できますし、将来を真摯に見据えた対応であると評価できます。

しかし、そうでないとすれば、本音と建前のあまり上手ではない使い分けな気がしてなりません。

むしろ、裁判官や検察官と同様に、司法を司る立場として、国民の権利を守るため適切なサービスを提供する必要性がある以上、競争社会に身を置く必要はあるものの、最低限の生活保障をも必要であるから、といった理由のほうが、逆にすっきりするし、納得できる考え方だと個人的には思います。

投稿: とある法科大学院生 | 2008年8月17日 (日) 13時25分

>とある法科大学院生さんへ

申し訳ございませんが、各弁護士会が合格者数の増加ペースにいてどのようなスタンスを取っていたのかはわかりません。

おしゃるとおり、法曹の質の確保と合格者数との関係について考えておく必要があったと思います。

ヒアリングを読んでみますと法科大学院による法曹の質の確保が懸念されるところであります。

また、今回のペースダウンしようという理由の一つに、合格者の就職先がなく法曹の質が保たれない、といったものがあります。
先輩法曹に教わりながら経験を積むことは、非常に重要なことです。

この就職先がないという状態になるということについては、あまり議論がなされなかったように思います。

投稿: | 2008年8月18日 (月) 19時22分

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